利益の獲得とコストの種類①(この追加注文は受けた方がいいの?)

 

新入社員β君と顧問税理士α先生の会話

β君:先生、A製品を1個当たり80円で30個販売して欲しいとの追加注文が

  あったのですが、A製品は1個作るのに84円かかるわけだからこの注文

  は断ったほうがいいですよね?

α先生:β君、ちょっと待って!そう決めてしまうのは早いよ。ところで、A製品の

   製造コスト84円はどうやって計算したの?

 β君:まず、1個当たり変動費が60円かかります。それと、固定費が総額で

   1,200円かかります。仮にA製品を50個作ったとするとコストが総額で

   4,200円(60円×50個+1,200円)かかるので、1個当たり84円(4,200円÷50個)

   になります。

α先生:それならば、僕はその注文を受けた方がいいと思うよ。

 β君:えっ!!何でですか?

α先生:だってA製品のコストの内、固定費の1,200円はA製品を何個作っても

   変わらないよね?だったら、追加で30個作るときに新たに発生するコストにだけ

   注目すべきだよ。追加でA製品を作るときにかかるコストは変動費の60円だけだから

   A製品を1個80円で販売できるなら1個当たり20円の利益が発生するよ。

 β君:なるほど。

α先生:β君が計算した製造コスト84円はあくまでもA製品を50個作った場合のケースなんだよ。

   A製品の固定費のように、追加注文を引き受けても断っても同額発生して変化しない原価

   のことを埋没原価というんだよ。今回のような判断をするときはこのような埋没原価は無視して、

   追加的に増加する収益とコストにのみに着目して判断すべきなんだよ。こうした分析の方法を

   差額原価収益分析というんだよ。

 β君:先生、分かりました。ありがとうございました。急いで課長に報告してきます!

α先生:どういたしまして。また何か分からない事があったら遠慮なく聞いてね。

 

こうした分析手法は今回のような追加注文の受注の可否だけでなく、製品を製造するための部品を

自社で製造するか他社に外注するか、あるいは複数ある投資案のうちどの案を選択するかなど

あらゆる場面に応用できます。上記の考え方はあくまで一例ですが、アルファ税理士法人では

単なる記帳代行や申告書の作成にとどまらず、経営者の良き相談相手としてこうした様々な経営上の

ご助言をさせていただいております。