令和6年度税制改正により、損金不算入となる交際費等の範囲から除外される一定の飲食費に係る金額基準が「1人当たり1万円以下(改正前:5,000円以下)」に引き上げられ、令和6年4月1日以後に支出する飲食費から適用されています。1人あたり1万円以下となったことで、改正前に比べると金額基準により損金の額に算入される飲食費も増加するものと思われますが、書類の保存要件等は従前どおりとなっており、あらためて要件等を確認していきます。

1 書類の保存要件
交際費等の範囲から「1人あたり1万円以下の飲食費」を除外する要件としては、飲食等のために要する費用について次に掲げる事項を記載した書類を保存する必要があります。書類の保存がない場合には、1人あたり1万円以下であったとしても交際費等に含まれることになりますのでご留意ください。

①    その飲食等のあった年月日

②    その飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係

  • 飲食等を行った相手方である社外の得意先等に関する事項を、「〇〇会社•□□部、 △△◇◇(氏名)、卸売先」というように記載
  • 氏名の一部又は全部が相当の理由があることにより明らかでないときには、記載の省略が可能
  • 相手方の氏名について、その一部が不明の場合や多数参加したような場合には、その参加者が真正である限りにおいて、「〇〇会社•□□部、△△◇◇(氏名)部長他10名、卸売先」という表示も可能

③    その飲食等に参加した者の数

④    その費用の金額並びにその飲食店、料理店等の名称及びその所在地

(店舗を有しないことその他の理由によりその名称又はその所在地が明らかでない場合は、領収書等に記載された支払先の氏名若しくは名称、住所若しくは居所又は本店若しくは主たる事務所の所在地が記載事項となる。)

⑤ その他参考となるべき事項

2 社内飲食費

 専ら当該法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出する飲食費(社内飲食費)は、1人あたり1万円以下であっても交際費等の範囲から除外される飲食費には含まれないため、金額に関係なく交際費に該当することになります。社内飲食の場に形式的に社外の者を参加させたと認められる場合にも、その実態を勘案して社内飲食費に該当することもあり得るでしょう。

 なお、資本関係のあるグループ内の別法人の役員又は従業員等はあくまでも社外の者となるため、これらの者を接待するための飲食費は社内飲食費には該当せず、金額基準により交際費等に該当するか否かの判定を行います。

3 隠ぺい、仮装行為

 金額基準により交際費等から除外しようとするために一の飲食等の行為を分割して記載すること、 参加者や人数につき虚偽の記載をすることは、事実の隠ぺい又は仮装にあたり重加算税(追徴税額 ×35%又は40%)の対象となることが考えられます。人数を水増ししたり、社内飲食に外部の者を参加させたかのように書類を作成することは許されることではありません。

「税理士懇話会(税務研究会)の一口解説より転載」