工場長γ氏と顧問税理士α先生の会話
γ工場長:先生、今わが社では機械の稼働時間に余剰があるので、
追加的に製品を製造販売して利益を増やそうと思っているのですが、
どう思いますか?
α先生:工場長、何か具体的な案でもおありですか?
γ工場長:以下の2つの案があります。
① D製品を追加的に20個製造販売する。
現在1個80円で100個製造販売している。1個あたり変動費は40円。
追加的に製造販売する20個分の販売価格は70円。
追加的な製造販売を行うと既存顧客の値引要請を拒否出来なくなるため、
これまでの100個分の販売価格が値引きされ1個75円になる。
② E製品の製造販売(10個)
現在、製造販売していない。販売価格は1個150円。1個あたり変動費は70円。
高品質のため、新たに熟練工を750円(固定費)で雇う必要がある。
α先生:なるほど。では、それぞれの案の利益額をまとめてみましょう。
①の案 売上 1,400 ②の案 売上 1,500
変動費 △ 800 変動費 △ 700
機会原価 △ 500 固定費 △ 750
利益 100 利益 50
α先生:①の案は、追加的な製造販売によって利益が
(70-40)×20=600円増加するものの、
100個分の製品の値引き分(80-75)×100=500円が
機会原価(vol.181参照)になるので、最終的な利益は100円の増加ですね。
α先生:②の案は、E製品の製造販売によって(150-70)×10=800円
利益が増加しますが、熟練工の賃金750円が新たに発生するので、
最終的な利益は50円の増加です。
熟練工の賃金は固定費ではあるものの、E製品を製造販売することによって
新たに発生する原価なので、埋没原価(vol.180参照)にはならず、
利益の計算上考慮に入れなければなりませんよ。
α先生:以上のことから、①の案の方が良いと思います。
埋没原価や機会原価というのは画一的に決まっているものではなくて、
その時の状況によって変化して生じるものですので注意して下さいね。
γ工場長:先生、分かりました。ありがとうございました。
三回にわたってお伝えした差額収益分析のお話は今回で終了です。
アルファ税理士法人では、こうした経営上のご助言も積極的に
させていただいております。