平成27年1月から相続税の基礎控除額は従来の4割が削減されました。これにより今まで相続税に関係無かった方も納税義務者となる可能性が高くなります。しかしその一方、被相続人の自宅を相続した場合、その宅地に係る相続税が軽減される小規模宅地特例の適用面積が240㎡から330㎡に拡充されました。今回はその特例を受けるための要件について、特に被相続人が老人ホームに入居していた場合をとり挙げて整理していきます。

 まずこの特例を受けるためには、以下2つの要件を満たす必要があります。

  1. 老人ホーム入居直前に被相続人と相続人が生計一
  2. 被相続人の自宅に、老人ホーム入居前から相続開始時まで引き続き居住してい       る相続人が取得

しかし転勤している相続人がこの宅地を相続した場合には、要件①②を満たすのは難しくなります。しかし、この要件をしっかり解釈すれば、転勤している方も受けられることが分かります。

  • 要件①の解釈

生計一とは、相続人が被相続人と同居していなければならないわけではありません。生活の財布が同じであれば生計一となります。したがって、別居の場合にも、常に生活費や療養費等を送金していれば生計一となります。

  • 要件②の解釈

相続人が転勤している場合、自宅に引き続き居住するのは難しいです。したがって「②の要件に該当しないため特例を受けることは出来ない」、というわけではありません。実は、生活の本拠の事実が、その被相続人の自宅にあれば大丈夫です。ではこの「生活の本拠」とはどういったことでしょう。規定上、生活の本拠は、「客観的事実により判定する」となっています。解釈はいろいろありますが、住居、職業、生計を一にする配偶者や家族の存在や資産の所在地等を中心に判断することとさています。ですので、休みごとに実家に帰っている、ほとんどの家財は実家に置いてある、などの事実があれば要件に該当する可能性があります。

 

 高齢化が進み老人ホームの入居者数が年々増加する昨今、老人ホームに入居した親の自宅を相続する方も多くなってきています。特例が受けられるか否かで相続税額が大きく変わってくる制度なので、詳しくはアルファ税理士法人の「相続・贈与相談センター」へご相談ください。