平成30年度改正において、企業会計基準に即した法人税における収益認識の法令明確化等の改正が行われました。

1. 収益認識に関する制度の概要

(1) 法人税法上の収益の認識時期と額

法人の各事業年度の所得の金額は、その事業年度の益金の額から損金の額を控除した金額とすることとされています。

その所得の金額の計算上、益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受その他の取引で資本等取引以外のものに係るその事業年度の収益の額とされ、その収益の額は一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとされています。

(2) 返品調整引当金制度

出版物等の事業を営む法人で、販売する棚卸資産の大部分について買戻しの特約を結んでいるものが、その買戻しによる損失の見込額として、各事業年度の終了の時において損金経理により返品調整引当金勘定に繰り入れた金額のうち、繰入限度額に達する金額はその各事業年度の損金の額に算入することとされています。

(3) 長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属年度の特例

法人が、長期割賦販売等に該当する資産の販売等に係る収益の額及び費用の額について、その資産の販売等に係る目的物又は役務の引渡し又は提供の日に属する事業年度以後の各事業年度の確定した決算において延払基準の方法により経理した場合には、その経理した収益の額及び費用の額は、その各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額及び損金の額に算入することとされています。

2. 新会計基準における収益を認識するための5ステップ

ステップ1

顧客との契約を識別

ステップ2

契約における履行義務(収益認識の単位)を識別

ステップ3

取引価格の算定

⇒値引き、リベート、返金等、取引の対価に変動性のある金額が含まれる場合は、その変動部分の金額を見積り、その部分を増減して取引価格を算定

ステップ4

契約における履行義務に取引価格を配分

ステップ5

履行義務を充足した時又は充足するにつれて収益を認識

(注)割賦販売における割賦基準に基づく収益認識は認められません。

<適用例>

契約

商品の販売

保守サービスの提供

取引価格の算定

配分された取引価格

収益の認識

ステップ1

ステップ2

ステップ3

ステップ4

ステップ5

3. 改正の内容

法人税における収益認識において、「益金の額」、「収益の計上時期」、「会計処理の基準に従って経理した場合の計上時期」に関して、国際会計基準をふまえた収益認識基準に合わせる形で法令明確化の改正が行われました。

4. 適用時期

上記の改正は、平成30年4月1日以後終了する事業年度から適用されます。

「税理士懇話会(税務研究会)の一口解説より転載」