事業を営んでいる方の多くは、事業の損益が気になっていることでしょう。損益を分析する方法はいくつかありますが、その中でも損益計算書の分析で用いられる損益分岐点について考えてみたいと思います。

 〇損益分岐点売上高とは
利益がちょうどゼロになり、利益にも損失にもならない売上高、つまり、売上と経費がピッタリ一致するときの売上高のことです。損益計算書の売上高、売上原価、販売費及び一般管理費の金額を用いて計算します。

 〇計算方法
限界利益=売上高-変動費
限界利益率=限界利益÷売上高×100%
損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率

 この計算をする場合に、最も重要となるのは、費用を変動費と固定費に正確に分けることです。変動費は、売上に連動して増減する費用のことで、固定費は、売上に連動せずにある程度一定額が常に発生する費用のことです。

 〇変動費と固定費
変動費とは売上に連動して増減する費用のことです。例えば、卸売業を営んでいる企業が、ある商品Aを仕入価格100円で仕入れ、その商品Aに20円の利益を上乗せして、120円で販売するといった場合、120円の売上を上げるために、商品Aを仕入れる必要があり、それらがすべて販売された場合は、売上と仕入れは直接連動することになります。このときの仕入れは変動費となります。

 また、企業が事業を営むときに、オフィスや工場の賃貸料1,000円や、電気代300円などが発生しています。この維持管理費用や電気代などは、売上と連動せず、毎月一定額が発生します。このような売上と直接連動せずに発生する費用は固定費となります。

 例 120円の商品Aを20個販売した場合
・売上と連動している費用(変動費)・・・仕入100円×20個=2,000円
・売上高・・・(仕入100円+20円)×20個=2,400円
・売上高と連動していない費用(固定費)・・・オフィス維持費1,000円+電気代300円
という事業者の場合、

限界利益率=限界利益(2,400円-2,000円)÷売上高2,400円×100=16.666…%
損益分岐点売上高=固定費1,300円÷16.666…%=約7,800円
したがって、7,800円の売上を出した場合は、利益0円になります。
7,800円より多くのの売上を出せば、利益になりますし、7,800円の売上が出なければ、損失になります。

〇損益分岐点売上高を計算する際の注意点
 損益分岐点は、それまでの実績(つまり過去の数字)に基づいて計算した数値ですので、今後の目安とはなりますが、必ずしも今後の利益になる数字とは限りません。あくまで目安だということを御承知のうえでご活用ください。