最近の決算発表等では新型コロナウイルス感染症拡大や近年頻発する自然災害等の影響により、その有する資産の価値が大幅に下落したとして評価損を計上する法人も見受けられます。税務上、原則として資産の評価損の損金算入は認められませんが、次に掲げる事実が生じたことによる評価損については、損金算入(期末簿価-期末時価を限度)が認められます。

資産

損金算入が認められる事実

(1)棚卸資産

① 災害により著しく損傷したこと② 著しく陳腐化したこと(季節商品の売れ残りで、今後、通常価額で販売できないことが過去実績等から明らかであることや、型式、性能、品質等が著しく異なる新製品の発売により通常方法での販売ができない等)③ その他上記に準ずる特別の事実(破損、型崩れ、棚ざらし、品質変化等により通常方法での販売ができない等)

(2)有価証券

① 上場有価証券等(企業支配株式を除く)価額が著しく低下したこと(事業年度終了時の価額が簿価のおおむね50%相当額を下回り、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれない)② ①以外の有価証券発行法人の資産状態が著しく悪化(特別清算等の開始や事業年度終了時の1株あたりの純資産価額が取得時の1株あ たりの純資産価額のおおむね50%以上下回ること)したため、その価額が著しく低下したこと

③ 上記②に準ずる特別の事実

(3)固定資産

① 災害により著しく損傷したこと② 1年以上にわたり遊休状態にあること③ 本来の用途に使用することができないため他の用途に使用されたこと④ 所在する場所の状況が著しく変化したこと

⑤ その他上記に準ずる特別の事実(やむを得ない事情により取得時から1年以上使用しないため、その価額が低下したこと等)

(4)繰延資産

① 繰延資産となる費用の支出の対象となった固定資産につき、上記(3)①から④までに掲げる事実が生じたこと② その他上記に準ずる特別の事実

 

災害による損傷だけでなく、長引く新型コロナ禍での営業自粛、時短営業、外出自粛等により、棚卸資産の過剰在庫を抱えるケースや店舗、工場等の固定資産につき遊休、用途変更がある場合などは、評価損の損金算入が認められる可能性があります。また、自社に直接影響がない場合であっても、保有する有価証券の発行法人や繰延資産の対象となる固定資産の状況によっては、有価証券や繰延資産についても評価損の損金算入検討の余地はありそうです。

「税理士懇話会(税務研究会)の一口解説より転載」