所有者不明土地の増加等の社会経済情勢の変化に鑑み、所有者不明土地の「発生の予防」と「利用の円滑化」の両面から、総合的に民事基本法制が見直され、令和3年4月21日に「民法等の一部を改正する法律」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が成立し、同月28日に公布されました。

「発生の予防」の観点から、不動産登記法を改正し、これまで任意とされていた相続登記や住所等変更登記の申請を義務化しつつ、それらの手続の簡素化・合理化策をパッケージで盛り込むこととしています。

所有者不明土地とは、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成30年法律第49号)において、「相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない一筆の土地」のこととされており、不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地、所有者が判明してもその所在が不明で連絡がつかない土地になります。

所有者不明土地の発生を予防する方策として、不動産登記法が改正されていますので、確認してみましょう。

1.相続登記の義務化

① 相続登記申請の義務化(不動産登記法第76条の2)

不動産を取得した相続人に対し、取得を知った日から3年以内に相続登記する必要があります。遺贈(相続人に対する遺贈)により取得した者も同様とされます。

② 「相続人申告登記」の新設(不動産登記法第76条の3)

相続人が登記名義人の法定相続人である旨を申し出る制度が新設されます。単独で申請が可能で、添付書類も簡略化されます。

③ 「所有不動産記録証明制度」の新設(不動産登記法第119条の2)

自らが登記名義人になっている不動産、被相続人が登記名義人になっている不動産の一覧を証明書として取得できるようになります。

④ 過料(不動産登記法第164条第1項)

正当な理由なく相続登記を怠ったときは、10万円以下の過料に処する旨定められました。

2.住所変更未登記への対応

① 氏名・住所について変更登記の義務化(不動産登記法第76条の5)

氏名や住所が変わった場合、2年以内に変更登記を申請することが義務化されます。

② 過料(不動産登記法第164条第2項)

正当な理由なく変更登記を怠ったときは、5万円以下の過料に処する旨定められました。

施行日は、相続登記義務化関係の改正は公布(令和3年4月28日)後3年以内の政令で定める日、住所変更登記義務関係の改正は公布後5年以内の政令で定める日となっています。

「税理士懇話会(税務研究会)の一口解説より転載」